第3回 みちしるべ 「進化する段位審査」

全剣連『剣窓』令和8年(2026)2月号

第3回 みちしるべ

進化する段位審査

全日本剣道連盟
会長 真砂 威

 令和2年の初頭に広がったコロナ禍は、剣道界においてもさまざまなネガティブな影響を及ぼしました。 6月に入りようやく剣道の活動を徐々に再開しはじめ、8月以降に段位審査を実施することを取り決めました。これは、閉塞感漂う剣道界に明るい雰囲気を立ち上らせようとの判断からです。
 8月、福岡県での審査会を皮切りに、10月兵庫県、11月愛知県・東京都と六・七段審査を実施してきました。審査の進行はコロナ禍以前に比べかなりスローダウンさせての実施となりましたが、すべての審査会は無事執り行うことができました。
審査の着眼点について認識を共有
 ところがいずれの審査会も〝コロナを乗り越えた〟という発揚した雰囲気がわき起こってきません。審査会の空気がどうも重い…
 これまでの審査結果に目を通すと、女性と高齢者の合格者数が極端に少ないという状況がわかりました。これによる落胆と失望の大きさが、審査会全体に暗雲を漂わせているのではないかとの判断に及びました。
 女性と高齢者の合格者数が少ない原因は、『称号段位審査実施要領』「段位審査の方法」に示された審査の着眼点(9項目)の1つである「勝負の歩合」を最重要視することとなってしまうゆえです。「勝負の歩合」のみに重点をおく審査であるならば、今後も女性と高齢者について、それに相応しい合格者を出すことはできません。
 なお、相手と勝負を競わない居合道と杖道では、性別や年齢において合格率の較差は生じていません。
 年が明けて令和3年2月、長野県で行われた六・七段審査会では女性と高齢者の審査について審査員相互間で認識を共有することとしました。それは、六段以上の審査の着眼点である「理合」「品位」「風格」をどのような見地でとらえるかであります。これについては、『剣窓』令和4年2月号「審査の着眼点について審査員相互間で認識を共有」をご覧ください。
 こういった経緯があり、六・七段審査において女性と高齢者の合格率は全体と比して全く遜色がなくなりました。これにより女性と高齢者の受審者数が大幅に増加したことは申すまでもありません。
高齢者から実施
 段位審査において高齢者の負担(時間的拘束)をできるだけ少なくするため、令和6年度の審査から段位の実技審査の順番を高齢者から実施することとしました。審査は、各審査会場とも審査用紙1枚(ABCD4人×5組=20人)ひと区切りで実施しています。朝一番の審査は審査用紙1枚で休憩し、直ちに合格発表します。審査開始後40~50分程度です。合格者は直ちに形審査会場に移動し、不合格の人はその時点で解散なので、合格不合格を問わず高齢者の拘束時間は確実に縮減されます。
 ただ八段審査だけは一次審査終了後、二次審査が行われるため、朝一番で一次審査に合格した高齢の方は、かえって拘束時間が長くなってしまいます。この点を指摘する向きもありますが、令和7年度の八段合格者の内訳をみますと、全合格者45名のうち60歳以上が25人も占めました。また、最高齢80歳を含む後期高齢の域に入る75歳以上の合格者が4名出ていることからして、この審査方法の利点多とみなし、今後も続ける予定です。
修業年限の短縮
 「生涯剣道」を後押しするため『称号・段級位審査規則』「受審資格」を改定し、令和7年度の六・七・八段審査から65歳以上の高齢者について修業年限が短縮となりました。これにより修業年限は、六段は五段受有後5年から2年に、七段は六段受有後6年から3年に、八段は七段受有後10年から5年に、それぞれ短縮となりました。
 この短縮措置により新たに受審資格を得た高齢剣士が数多く受審されました。また、この修業年限の短縮は極めて好評で、五段以下の審査にも適用してほしい、という要望が多く寄せられています。これを受け、称号・段位委員会では各方面からの意見を徴しつつ前向きに検討を進めることとしています。

                 

※ 「みちしるべ」は、毎回このように綴って参ります。                      ぜひ本誌『剣窓』をご購読ください。購読のお申し込みはこちらからお願いします。

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